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LIVING好きなことや趣味に重きをおいた、こだわりの空間
2017-09-11

尾道移住。大好きな街で、自分で手を加え、旅するように暮らす理由

尾道在住
美大卒のディベロッパー
中尾 早希(ナカオ サキ)

行ってみたい場所、住みたい場所、そこからすべてを決める。仕事は、移住してから探してみよう。まずは土地と空間が大切。それは、旅をしているみたいな感じかも。
尾道で、まるで家を自らの手で育てるように、自分の手でリノベーションしながら暮らす女性に会いました。

「いつか」住みたい街、尾道
つくる段階から携わりたい。その思いから移住を決意

――この土地に住もうと思ったきっかけは何ですか?

ここから船で30分ほどの島で育ったんです。そこに住んでた時から尾道には遊びに来ていましたし、人生で最初にひとり旅をしたのも尾道でした。尾道はとても好きな場所。私の中で、いつかは絶対に住みたい場所のひとつだったんです。
大学でインテリアを学んでいたのですが、日本の人口が減少傾向にある今、純粋に新しい建物をつくるのではなく、古いものや元々あるものを活かしてその「伸びしろ」を伸ばす方が面白いと感じ、私が将来やりたいことだと思ったんです。そこで尾道が思い浮かび改めて旅人として訪れたのが移住を決めたきっかけです。 尾道も同じようにここ4〜5年で空き家がどんどん新しいものに変わっていて、私が移住する前に自分がリノベしたくなるような物件がなくなってしまうのではないかと思い、予定を繰り上げて移住しました。

年代を経た味のある住宅も数多く残る街並み

――インテリアなど、つくるプロセスにあった興味が、街にまで及んだということでしょうか?

かっこいい建物や空間をつくればOKではなくて、人が生活するとか、買い物したりだとか、密に使っていく空間が一番大事な部分なんじゃないかと。
そこでつくったことに対して、どういうイベントが発生したりするのかとか、どういう人がどのように使うというのが重要だと考えるようになり、新しくつくり続けるよりも元々あるものの「伸びしろ」を大切にしたいと思ったんです。私の中での重要ワードは「伸びしろ」なんです。

――尾道の「伸びしろ」とは何だと思いますか?

昔からここは文学の街、映画の街、坂の街、猫の街、街に対しての切り口がたくさんあるのでそれを活用しない手はないと思いました。宮島ほどの大きい規模の観光地でもない。でも、だからこそ街の雰囲気も壊れてない。そういうところも尾道の「伸びしろ」です。訪れてくれた人に「尾道って面白い街だよねっ!魅力的だよね!」って言ってもらいたい。
尾道を旅した時、どこへ行くか目的もなかったのですが、気になる細道を巡ったり、予期せぬところにある何屋さんかわからないようなお店に立ち寄ったり、地元のおばあちゃんや面白い移住者、観光のおばちゃんたちに話しかけたりとか、一人旅なのに一人じゃないようなほっこりした感じを味わったのを覚えています。

――そういう旅スタイルは人生観と同調していたりしますか?

なんでしょうね、仕事とプライベートをきっぱり分ける人もいますが、私は好きなことや趣味が仕事にになっているような感じです。今は世間的には会社員ですが、街が好きでそこにいる人と変わらない感覚で、そこに仕事がついてきたというような感覚です。そういう意味では人生観と沿っているかもしれないですね(笑)。

元々あるものを工夫した居心地のいい住まい

自分でリノベーションして家の価値を上げてあげたい

――自分でリノベーションしようと思ったのはどうしてですか?

お金の面で人に依頼するより自分でやった方がいいっていうのと、あとは、人にやってもらうとなったら、完成したところに入るので新築と大差ないな・・・と。自分のペースと感覚で、ちょっとずつリノベーションをやっていこうと思いました。その方が面白いライフスタイルが送れると思いません??

――賃貸で改修可能な物件って結構あるのでしょうか?

正直、HPなどにはほぼないと思います。自分で歩いてみて、ここ空き家ぽいという物件を見つけたり、近所の人に「この家はどなたか住んでるんですか?」と話しかけて大家さんを見つけ、そして直接交渉する感じです。
NPO法人の「尾道空き家再生プロジェクト」が「尾道市空き家バンク」というのを運営していて、HPに空き家情報が状態に分けられて紹介されているのがあって、気になった物件について問い合わせると、大家さんとつないでくれるんです。それもまた大家さんと直接交渉。普通にネットではアクティブな情報はあんまり出てこないですね。

――この家のリノベーション、テーマはズバリ?

テーマは、まずは2年かけて完成させること。そしてこの家の価値を少しでも上げること。2年更新の契約をしているのですが、もし私が手放して次の人が借りる時、現在私が借りている家賃よりも1万円高くても借りたいと思うように、価値を上げてあげたい。そういうのが日本ではあまりなく、古くなると安くなる。でも手を入れた分価値が上がる文化とか、風習とか、住まい方って素敵だし、大事だよねっていうのを伝えられたらうれしいです。

――これからのリノベーション計画は?

畳の間をフローリングにして壁をモルタルにしようか迷っています。1階はフローリングで2階は畳でもいいかなと。今は和室のままのスタイルですけど、フローリングにしたら椅子やテーブルを置いて生活動作が高い位置でできる洋風スタイルに近づけようかなと思っています。
一方で畳も捨てがたいなという思いと葛藤しています。和室のメリットはやっぱり柔軟なことだと思うんです。客間にもなれば、布団をしけば寝室にもなって、テレビを置いたらリビングにもなる。使い方が自由に変えられるのがいいなと。洋風にしたらソファーを置きたい。でもソファーを置いちゃったらもう寝室にはならなかったり、ベッド置いたら寝室以外には使えないなとか、それが嫌だなと思ったり。楽しく悩んでます(笑)。

使い勝手を考えると捨てがたい畳の間

味のある住まいに似合う家電をセンスよくセレクト

やり方も、優先順位も自分で決めて試行錯誤しながら

――手を加えるにあたり、優先順位ってどんな風に決めるのでしょう?

トイレとお風呂、キッチン。水まわりが絶対に生活の上で使うので、そこがまず最優先でした。リビングは正直、本当に何にもない状態でも布団さえあれば寝られるからOKという感覚だったので、現時点でリビングは照明を替えたくらいであまり手をつけられていないです。他に自分がやったのは祖母が捨てると言っていた和服ダンスを食器棚に改良したことです。7段だったのを3段に切って、ホームセンターで板を買って切って、ニスを塗ってと全部自分でつくったんです。

――リノベーションの技術習得はどこでどのように?

地道にネットで、「床、張り方」とか検索して見ています。結構「リノベでこういう風になりました!」とか写真をアップしている人たちがいるのでそれを見習っていますね。大学でも建築系や土木系に進まないと技術的なことは学べないと思うので本当にどんな人でもネットで調べてやるっていうが一番なのかなと思います。本も以外と応用がきかなくて、基本しか書いてないことが多いので、ネットの方が失敗談もあったりして面白い情報が手に入ります。実際の空き家をリノベしている例もあったり、細かく写真も載っていたりするので、分かりやすく参考になります。

――ひとりではできないリノベーションもありますか?特に協力が必要な部分ってどの辺でしょう?

電気系は電気屋さんがやらないといけないというのが法律的にあるようで、配線を変えたくても無理でした。電気は一式替えたいなと思っています。
壁を塗る時、家族や友人に手伝ってもらったことがありました。大きい家具とか、例えば壁を抜きたいとか天井を替えたいとかそういうのになったら、基礎的なことはわからないので、「空き家再生プロジェクト」の人をレンタルする予定です。その人たちにまず来てみてもらって、それから実際にやるって感じです。

祖母の和箪笥がDIYによって食器棚としてつかわれていた

木の枠をつくりかわいらしい印象に仕上げたシンク

暮らしながらのリノベーション
やってみたからこそ、わかったこと

――暮らしながらリノベーションするって、どうやっているのですか?

ここの物件は5Kになるんです。これだけ部屋があったらどこかの部屋がつぶれても全然大丈夫なので、まったく気にせず1部屋にはブルーシートがしいてあったり、養生したりしていても問題ありません。塗ったり削ったりするエリアと、料理をしたり寝たり生活するエリアを分けています。作業場も確保できますし、部屋数があるので特に不便なく、生活と作業を分けられています。

――手を加えた中で、一番気に入っているところはどこですか?

トイレが一番好きです。一番「before→after」が明確だったというのが面白いですね。でも実はトイレは狭いからかなり難しかったんです。「壁を塗るには、失敗してもいいからまずはトイレから」と書いてるサイトが多くて、トイレから始めてみたのですが、狭い範囲に対して、天井、壁四面、意外と大変。「コテが入らないし!」とか(笑)。広い壁を一気に塗れた方が、絶対楽しかったと思います。
最初にトイレをやってすごく時間がかかって、そのあとお風呂〜二階と進めた時に「広い方が楽じゃん!」って思いました。やってみたからこそわかったというのもありますね。
このトイレの「伸びしろ」は、地面と壁のタイルのかわいらしさと真壁(和建築にみられる柱の出ている壁)。あと、小さな洗面台です。そこはうまく残したくて、柱はオイルステインでトーン合わせしただけ、繊維壁は漆喰に塗り替えました。手すりやフックのような余分なものは取り除いて、便座は木に変えました。

木とタイル、「伸びしろ」を活かしたトイレまわり

家を自分で変えていく
その面白さがたまらない

――自分でリノベーションする魅力って何でしょう?

一番は楽しいこと。わからないから大変、という意識は二の次で、まずはやっているのが楽しい。自分のペースでコントロールしながらできるのが面白いです。そして、プロセスや変化が楽しい。人と同じで家も成長できるんだなあと思います。

――リノベーションで目指しているゴールはありますか?

まずは2年で物件価値を1万でも上げていくという生活をすること。これを次々と行っていくと、空き家が空き家ではなくなり移住者が増え、街自体が面白く成長するのではないかと思います。ゴールはないのかもしれませんが、こういう活動や私を面白いと思ってくれる人たちとつながっていくのがまた面白いですよね。
ここに住みつつも、人に貸すこともできるので、実はまた空き家を探そうとしています。友達と一緒に借りてシェアハウスにしたり、旅人を泊めてあげたりするのも良いかもという計画も出ているんです。そうやって柔軟にリノベーションと暮らしを両立していけたらと思っています。

2年かけて古い家の良さを引き出す計画

尾道は、自分にとってベストな答え

――友達の輪はどこで広がるんですか?

友達の友達がどんどん友達になって増えています。尾道に住んで尾道で働いている友達ばかりです。なんだか大学の中にいるような感覚なんですよね。住んでいるところも近いですし、友達がやっている店に遊びに行ったり、仕事終わりに「今から遊ぼう!」って誘うと「いいよ」ってなる。都会にいたらお休みじゃないとなかなか会えなかったりするけれど、ここにいたら、「今暇?遊ぼうよ」と誘うと、「いいよ!海にいるよ〜」と返事が来て海辺でギターを弾いたり、時間も気にせず長話したり、このゆるい自由さが妙に心地良いんです。社会人だからってキリキリ仕事して、たくさん稼いで派手に遊ぶなんてこともなく粗野な感じ。尾道シティという大学にいるようですごく面白いです。

――今、東京と尾道ではどちらが好きですか?

尾道です。東京は友達も多いですし、新しい物事が入ってきたり発信される場でもあるのでそれらを楽しむために定期的に行けたらいい場所です。東京は住むのにも絶対面白い街。でもやりたい仕事がなかったら住む必要もないかなって思います。
私は、リノベーションに興味があったし、旅するように住みたいっていうのを考えた時、私には尾道がベストな答えだったんです。自分のライフスタイルにぴったり沿ってる感じがするので、これからも、面白い人や仕事に囲まれてまったり暮らして行きたいです。

――旅も、人生も、空間のつくり方も、その場の偶然などを柔軟に捉えながら素敵なものにしていくような、彼女のスタイル。

行き当たりばったりのようで、きちんと居心地のよい場所にたどり着いている。 「旅するように暮らす」そんなちょっと羨ましくなるライフスタイルに尾道で出会いました。

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