Howscope

LIFE暮らしたいように暮らしている人の、暮らし
2017-02-22

アーティストのアトリエのような美容室。
パリで出会ったプロ達の職場をイメージして。

Real Clothes
代表
四元 弘忠(ヨツモト ヒロタダ)

名古屋で美容師として活躍した後、大阪で美容室を経営。パリへ渡り修行。そして現在、東京の下北沢に美容室を開いている四元さん。ゴージャスで高級な美容室とは一線を画した異質な美容室空間と、四元さんのスタイルについて伺った。

楽しいことを捉えるスタイル

――名古屋・大阪・東京、修行をしたパリを含めて拠点を次々に変えていらっしゃいますが、新しい場所に留まりたくないといった信念があったのですか?

確固たる意思があって、そこに進んでいったというよりも、僕の場合は直感的に身を任せるというか(笑)。そういうところがあって、でも「楽しいこと」を捉えていくのは一貫していますね。確かにステップアップしたい思いもあるのですが、基本は楽しいことをしたい。場所には特にこだわりはなくて、何があるか、何ができるかなんです。

――年に何度も美容師向けの講習などを行っていますが、その理由とは?

僕もそうだったのですが、悩みを抱えている美容師は多いんです。マニュアル通りにやらなきゃいけないスタイルのお店で、個性やセンスがある美容師が生きにくかったりもする。そういう美容師たちに、技術を教えることで、また違った美容師の道を示せたらと思っています。あとは、自分のためでもあります。教えるとなれば、技術も常に磨いていなければならないので一生懸命になるんです。
根底にあるのは、パリ時代の経験です。パリで全てがガラリと変わったんです。ガラガラと音をたてて、信じていた価値観なんかが壊れていくようでした。

楽しいことを真剣に取り組むのが四元さんスタイル

価値観までも変えてくれたパリ

――四元さんを変えたパリのことをもっと教えてください

2000年頃、パリに講習を受けに行っていた人たちの中には、著名な芸能人をカットしている方や、雑誌に特集されたり、店舗的にも有名な方がいたんです。だけど、パリの美容師たちは、それがどうした?という感じで、こう聞いてくるんです。「それで、そのカットはスゴイのか??そいつの切る髪型はそんなにイケてるのか??」って。
「カットした髪」それがどれだけの技術のもので、カッコイイスタイルになっているか。それだけなんです、彼らの価値基準は。日本では、店舗の経営や名声、そういうもので美容師の成功を計るのが普通だと思っていたのですが、彼らは違った。つまり、ハサミを持って作り出す、そのカットでしか、美容師を判断しないんですね。
殴られたような衝撃でした。変わってみたい。彼らのようにストイックな世界に飛び込んでみようと、そう思ったんです。

パリの思い出が詰まったアルバムたち

――その経験がその後の四元さんを変えたんですね?

変わりました。素晴らしいと感じたカット技術のことだけではなくて、店舗への根本的な考え方、人として、美容師としての「芯」のようなものがスッと一本通ったような気がしています。
とはいえ、パリの美容師たちのように、際だったセンスを僕は持っている訳ではなくて、彼らはお客様の注文通りになんて切らないんです。なぜならその人が一番素敵に見えるヘアスタイルが分かるんです。前髪を切りたくないという人の髪をばっさり切ったり、あまり短くしたくないというのにショートカットにしたり。でも、絶対似合ってるんですね。その、自信というか、そういう風にはできなくて、僕は「お客様が求めていることの少し上」を提供することが、僕のスタイルだと思っています。お客様の希望を聞いて、それを活かしながら、自分の経験と技を加えて素敵に仕上げる。お客様の希望と自分の思い、それぞれを活かしたスタイルを目指しています。

武士の刀置き場”をコンセプトとしたハサミのオブジェ

東京、下北沢へ

――この空間のことを、教えてください。下北沢に店舗を構えようと思ったのは何故ですか?

東京へはヘアメイクを学びに大阪から通っていたのですが、何度も訪れている中で、ここにはパワーがある街があるなと感じていました。表参道や自由が丘なんかもそうです。その中にあって下北沢はとてもユニークだなと思ったんです。お金のなさそうな、でもキラキラとした若者たちが、安いお酒を飲みながら夢を語っていたり、雑多で純粋なパワーに溢れているなと。漠然と、この街はいいなと考えていましたね。

――物件を見つけた際、「こんなに最適な物件はない!」と思われたそうでうね?大阪に店舗もあった状況でも、心を動かされたこの物件の魅力とは何でしょう?

ここがまた、「楽しそうな方に流れていく」僕の気質が発揮されてしまうんですが(笑)。そうなんです!大阪のお店も順調だったので東京で出店することは全く考えてなかったんです。でも、あまりにも自分が考える美容室としての物件としてピッタリだったんですね。駅からそう遠くはないけれど、しばらく下北の街を散策してから駅に辿りつくロケーション、通る人々から店舗の雰囲気や中で行われていることが見えるような窓の広さ、一階であること。全部が理想的でした。聞くだけ聞いてみようと不動産屋さんに聞きにいったら空いていて、じゃあ契約と・・・(笑)。本当に自分でも驚いてしまうくらい、衝動的な行動でした。

理想的な条件ばかりだったという物件

――内装をGRIDFRAMEさんにお願いしたそうですが、きっかけはどんなことですか?

グリッドフレームの田中さんの「汚し得る美」という文章をネットで見つけ、すごいこだわりだなと感じたんです。それで直感的に「この人だ」と思ったんです。
実は、今まで自分がやってきた店舗の内装について、違和感を感じていました。パリで出会った「職人」のような美容師たちの影響が大きかったのかもしれません。飾り立てたり、大げさな装飾はいらなくて、無機質なアーティストのアトリエのようにしたいと思っていたんです。田中さんと出会って、話をするうちに、ちょっと難しくて全部を理解することはできなかったのですが(笑)、とにかくすごいことやってくれそうだと感じまして、それでお任せしようと決めました。

鉄板を使った存在感のある店舗看板

――内装について、どんなことをこだわりましたか?

僕がオーダーしたのは、2つ。「アーティストが絵を描く空間のような、作業場にしてほしい」「一切手を抜かない、手仕事の空間にしてほしい」ということだけでした。あとはプロの方に任せようと。職人であり、アーティストである美容師が仕事をする、そういう場所にしたいと思っていました。パリで出会った、仕事に強烈な誇りを持っているプロたち、そういう彼らの仕事場をイメージしていたんです。

――この空間について、今はどんな印象を持たれていますか?

そうですね、窓が広いしコンクリートはむき出しで、冬は寒い過酷な環境です(笑)。
でも、ここにいると、僕もプロとして絶対に手を抜けないと、そういう気配がヒシヒシ伝わってくるんです。田中さんたちの怨念のような強い意志が(笑)。一切手を抜かないで創り上げてくれた箇所ばかりのここにいると、身がピリッと引き締まります。

なにひとつ手を抜かない職人が創り上げた空間

――特にインスピレーションを受ける場所などありますか?

どこというよりも、全部なんです。カタログから床材や壁紙を選ぶことは一切なく、この床も染みを付けたり、壊して創り上げてくれた壁も、存在感のあるロッカーも。随所にプロの手間と創造性があふれています。その全部がない交ぜになって、僕を、そしてスタッフを刺激してくれる。まったく、気の抜けない空間ですね(笑)。
ここは、自分自身のように感じるんです。別の場所で髪を切ると、とっても落ち着かない。店舗であり仕事場ですが、もう僕の一部分。この空間まるごと全てを身につけていたいと思うくらいの存在になっています。

育ってきた植物がちょうど良い感じのスクリーンになっている

存在感を放つこだわりのロッカー

イーゼルをモチーフとしたカット台の鏡

Real Clothes
東京都世田谷区北沢3-21-11パングラン 1F
http://www.0334662608.com

GRIDFRAME
http://www.gridframe.co.jp

関連キーワード

最新記事