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2017-09-12

真のクールジャパンとある女性との出会い
サカクラカツミさんインタビュー中編

サカクラカツミ
1963年生まれ。日本の伝統文化の持つ独自性をエンターテイメントパフォーマンスとして表現するORIENTARYTHMを主宰する。生のパフォーマンスとプロジェクターからの映像をシンクロさせたパフォーマンススタイル「プロジェクションライブ」は、世界で高く評価され現在までに39ヵ国から招聘されパフォーマンスを行い、18ヵ国のTV番組に出演。また「世界に伝えたい日本のカッコ良さ」と題し国内外での講演活動も行っている。

投影された映像とシンクロしたパフォーマンスの先駆けとして知られ、日本のみならず世界を舞台に活躍するサカクラカツミさんに、前回に引き続き話を伺った。現在の活動のきっかけとなったアメリカ人女性との出会いとは――

――日本の良さを伝える活動を行っているサカクラさんですが、かつては黒人文化への憧れが強かったそうですね。

今から30年ほど前、20代の頃はヒップホップにどっぷりハマっていて、肌を黒く焼き、ドレッドヘアにしていました。ただ、今から思えばその頃はインターネットも無く、情報がほとんど入ってこなかったので、自分はただ見てくれだけに憧れ、猿真似をしていたに過ぎなかったんですね。

――そこから現在のスタイルに至る、大きな出会いがあったそうですね。

その当時、名古屋でダンススタジオのインストラクターの仕事をしていました。そこに、ハリウッドで有名な女性の黒人ダンサーが、ワークショップを開くからということで、自分がアテンド係に選ばれたんです。雑誌の表紙を飾るような有名な方でテンションが上がっていましたね。自分は完全に黒人になりきっていたつもりでしたから、自分を見たらさぞや褒めてくれるだろうと自信満々でした。

――しかし、違ったと?

みんなの前では「カツミ、NICE!」と褒めてくれたんです。それで、鼻高々になっていたんですが、1週間ほど日本に滞在した彼女が、明日アメリカに帰国するというタイミングで、ホテルのロビーで「コーヒーでもどう?」と誘われたんです。そこで事件が起きたんです。

――なんだかセクシーな話のようですが……。

そうだといいんですが、席につくなり彼女は、それまでの笑顔から形相が変わり「あんたは間違っている」と厳しい口調で、僕の黒人風スタイルについてダメ出しをしてきたんです。

――褒めてもらったと思ったら、実は違っていたんですね。

彼女は、黒人たちが長い歴史の中で白人社会からどんな仕打ちをされて来たのかを話してくれたんです。そして、そこで初めてヒップホップというものが、彼らがやっと見つけた居場所であり、文化だと知りました。

――驚きましたか?

ええ、言葉になりませんでした……。そんな大切な文化を、アジアの若造が見てくれだけ真似していたら怒るよなと。そして、彼女は最後に「日本にはカッコイイ文化が沢山あるじゃない?なぜ、それを受け継がないの?」と教えてくれたんです。

――それが大きな転機になったわけですね。

彼女の話を聞き、ホテルを出たその足で散髪屋に行き丸坊主にしました。しかし、すぐには「日本のカッコ良さ」が分かりませんでしたね。

――それまで、ダサいと思っていたものをカッコ良いとはなかなか思えないですよね。

自分だけじゃなく、周りも欧米に憧れている人間ばかりでしたからね。日本の文化として、自分が持っているものと考えた時に、昔習っていた空手ぐらいでした。でも、それもまだカッコ良いものであるかは分かりませんでした。

――そこから、どのようにして今のスタイルに?

一番大きな気付きは、アメリカのロサンゼルスにある、ベニスビーチでの経験です。ストリートパフォーマンスのメッカで、世界中のアーティストやパフォーマーが集っている場所で、自分も日本から乗り込んでパフォーマンスをしに行ったんです。

――その時は、どういったパフォーマンスを?

色々試しました。派手なスピンキックをしてみせたり、習字の道具を持っていって英語の名前を、漢字で表現したりとか。なかなか良い反応は得られなかったんですが、その時に試しに空手の「型」をやってみたんです。

――反響があったと。

まさかの一番人が集まりましたね。地味なパフォーマンスだと思っていたので、賞賛されるとは思っていませんでした。それをきっかけに、様々な日本の伝統に触れては、その良さに気づいていくという繰り返しで今に至っています。

――日本人は、他国と比較しても、自国の文化に誇りを持っていない人が多い印象です。

大学で講義をする時に話を聞くと、「憧れは欧米で、日本はイマイチ」だと答える人は少なくないですね。ところが、自分が講義をしてアンケートをとると、「日本のカッコよさを知らなかった。これからは誇りを持ってカッコイイと思えます」と書いてくれる人が多いんです。これは、自分の講義がスゴイという話ではなく、みんなも昔の自分と同じで、日本のカッコよさを知る機会が、これまで無かっただけなんだなと。

――つまり、もっと知ってもらう機会が必要だと。

日本の美徳に「謙遜」という言葉ありますが、僕は中身が伴わない薄っぺらな「謙遜」が嫌いです。日本人の国民一人ひとりが、自分たちをカッコイイと思いながら、「自分たちはまだまだ」と謙遜することで、初めて真のクールジャパンになれると思っています。

――今後は、その良さをもっと知ってもらうための活動を行なっていくということでしょうか?

これまでは海外に「日本のカッコ良さ」を発信することばかり考え活動していましたが、今は日本国内から変えていく必要があることに気づいた感じです。来る2020年の東京オリンピックに向けて、前回もお話した「惻隠」の心を、日本人に向けて発信していきたいと思っています。

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日本人が自ら日本の良さに気づいて欲しいと語るサカクラさん。自分自身がかつて変わったように、日本全体が変わることが、真のクールジャパンになると語ってくれました。次回は、少し視点を変えて日本の様式美である、「間」の美しさについてお話を伺います。

(取材・文 黒宮丈治)

■「サカクラカツミ」オフィシャルWEBサイト
http://orientarhythm.com/
■世界に伝えたい Cool Japan | サカクラ カツミ | TEDxTokyo
https://www.youtube.com/watch?v=MmqKDMfM6hU

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