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LIFE暮らしたいように暮らしている人の、暮らし
2017-04-10

”壊す”ことで生まれる、未完成のリノベーションハウス

TOOL BOX
石田 勇介さん
www.r-toolbox.jp

「作るより、壊す作業が主だった」。現在の住まいについてこんな印象的な言葉を残してくれた石田さんは、空間作りを生業にするその道のプロ。まだ今の会社に就職する前に、趣味の延長として蓄えていたリノベーションに関する膨大なアイデアを形にしたお宅には、“リノベーションハウス“の醍醐味が存分に詰まっていました。

好きが高じて、リノベーション関係のお仕事に

――石田さんご自身も、toolboxという会社で住まいに関するお仕事をされていますよね?

そうですね。現在は、空間作りをするための素材や施工サービス、アイデアを提供するWEBショップで働いています。それらの素材の開発から、中古マンション向けのパッケージリノベーションを販売するようなプロジェクトまで、かなり横断的にやらせていただいていますます。

――いわば今のお住まいは、リノベーションのプロがご自身のために建てたリノベーションハウスというわけですね?

いや、toolboxに入社したのは1年前くらいで、この家を建てた6、7年前は映像の仕事をしていたんですよ。でも元々インテリアにすごい興味があって、主に内装にまつわる資料をたくさん集めていました。当時は、それらのアイデアを紹介するWEBサイトなんかもやっていたり。

――ご自身で?

はい、ただの趣味で(笑)。利益云々ではなく、せっかく集めた資料を自分だけで留めておくのはもったいないと思って。その一環として、リノベーションにまつわるおもしろいことをやっている会社がないかを調べていたので、今の会社の存在は以前から知っていたんです。でも「負けないぞ」っていうライバル心の方が強かった(笑)。

――初めからリノベーションに強い興味があったんですね。「新築の家に住みたい」という想いはありませんでしたか?

物件自体が魅力的だったら、それはそれでアリかなとは思っていました。でも実際に探すと、使われている素材ひとつとってもなかなか理想的な家が見つからなくて。やはり自分のイメージを形にできる手法は、リノベーションしかないなと。

膨大な資料をベースに、理想の住まいへ。

――リノベーションをすると決めた際には、やはり昔からストックしていたアイデアがベースになったんですか?

そうですね。お風呂やキッチン、リビングなど、それぞれに対して何十というアイデアがあって、予算やすでに持っている家具との相性も考慮して取捨選択していきました。でも、家作りって本来そういうものだと思うんです。買うと決めてから色々考え始めるのでは、どう考えても時間が足りないじゃないですか?「そんな短期間で家を…」と(笑)。実はそこで実現できなかったアイデアが、今toolboxで活かされていることもあるんですよ。

――リノベーションを前提としたとき、どんなポイントを見て物件を決めたんですか?

外観も含めた建物の雰囲気と広さ、あとはマンションなのに中庭があるところが気に入って。購入時は4LDKにリフォームされた状態で、その前は5LDKだったらしいです。割とリフォームしてすぐに僕が買ったようなのですが、すぐに壊しちゃった。たしかにきれいだったんですけど、ピカピカな感じが嫌で、全部壊そうと思いながら内見してましたね(笑)。だから、作ったというよりは“壊した“という表現がしっくりくるかも。

――この物件に決めてから今の形になるまで、どのくらいかかりましたか?

想像していたより結構長かった…。普段家作りであまり使わないような素材ややり方を希望するものだから、「そんなもの発注できない」「やったことないから無理」って断られることが多くて。でも諦められないから、ネットで探して発注したり、大工さんに「失敗してもいいから作ってみませんか?」とお願いしたり。ものによっては「海外からの取り寄せなので2ヶ月かかります」と言われて工事が止まったこともありました。そんな感じで、半年くらいかかりましたね。

――石田さんも大工さんも、どちらも大変でしたね。

この物件を買ったのが12月なんですけど、当初は2ヶ月で終わらせるつもりだったので、前に住んでた住んでいた家も2月に解約することになっていたんです。だから、全然出来上がってないのに引っ越してきちゃったんですよ。キッチン部分では床に穴が空いていて、家の半分くらいにブルーシートがかかってるかかっている状態。シート一枚隔てた向こうは工事中みたいな(笑)。その状態で4ヶ月くらい生活していました。夜中に帰って来て仕上がりを見て、「少しイメージと違うので、こうしてください!」と紙に書いて貼ったり。途中からは大工さんの方から色々とアイデアを提案してくれるようになって、お互い楽しみながら完成に向かうことができました。

――逆にこまめ細目にチェックできたからこそ、イメージ通りのお住まいになったわけですね。

とはいえ、当初イメージしていたものとは変わっている部分が結構あるんです。予算的に無理だったり、材料が手に入らなかったりして、変えなければならないところがどうしてもできてしまうんです。でも妥協して「これでいいや」とするのではなく、「何かいいアイデアはないか」とやっていくうちに、想像を超えてダイナミックに変わっていく様がおもしろかった。その部分を職人さんと直接コミュニケーションをとりながらやれたのは、本当によかったですね。

創意工夫こそ、リノベーションの醍醐味。

――お部屋に入ってまずは広々としたキッチンに驚かされます。これはすべてオーダーメイドで?

はい。僕が下手な絵を描いて(笑)。食洗機やオーブンもひとつに収めているんですけど、主に海外の電化製品を使っていて、向こうの製品は規格が決まっているので、仮に新しいものに変えようとしてもそのまま収まるんですよ。レンジ、オーブン、食洗機はすべてドイツのAEGというメーカーのもの。ドイツ製のプロダクトは無駄な装飾がなく、ドアの開閉の精度もとても高いので気に入ってます。換気扇はHaatz。あまりイメージにないですけど、韓国の家電もいい物がありますね。手前のサブカウンターは、故郷の福島から運んだビンテージテーブルを改造して、水洗やIHを取り付けてもらいました。

――洗濯機もここに収まっていますね。

がんばって考えて理想のお風呂を作ったんですけど、どうしても洗濯機を置くスペースが確保できなくて…。そんな時にキッチンにビルトインできる方法を知って、これしかないなと。海外だと結構一般的で、水回りということでまとめてしまいました。その他の家電と同じサイズに規格が決まってるから、見た目もすっきりと収まりますし。

――壁にパイプ取り付けて、そこに小物をかけるのも素敵です。

これは、この家を解体している最中に出てきたものを、僕が勝手に付けたんです。元々電気温水器に繋がっていたようで、廃棄されそうになったものを「捨てないで!」って(笑)。

――壁は解体した当時のままにしているんですか?

壁紙を剥がした後のパテ跡もおもしろいので、そのままにしました。天井も抜いて、配線とかもあえてむき出しの状態にしています。

――家具についても教えてください。このテーブルは?

これ、自作なんですよ。toolboxで売っているフローリングなんですが、最初は普通に床に並べて使っていたんですけど、思い立ってテーブルにしてみました。キャンプ用のテーブルの脚を使っているから、キャンプに行く時は外して持って行ったり。裏側を見ると作りが適当なことがわかるんですけど、使い勝手は悪くないし、部屋全体が未完成のようなテイストなので、うまくはまっているんじゃないかと。

――ご自身で作ったものが並ぶ一方で、デザイナーズ家具もいくつか。

そうですね。マーク・ニューソンのグレーのオルゴンチェアは、学生時代に買ったものを今でも愛用しています。当時は強い憧れだけで購入して、置くスペースがなくて天井に吊ったりしたこともありましたが、やっとバランスよく置けるようになりました。

――黒い床も新鮮です。何の素材をつかっているんですか?

通常は店舗の床材などで使う、長尺シートという素材です。元々あったフローリングの上に一枚板を挟んで、その上に貼っています。家具も映えるし、メンテナンスもやりやすいので気に入っています。でも、これも家作りではあまり使われないらしく、大工さんも「誰に貼ってもらおう」って悩んでましたね(笑)。

――玄関前はストックルームとして?

そうですね。衣類や靴もそのまま棚に置いています。家全体の壁をなくしてしまったものだから、収納と呼べる機能があまり無いんです。なので、照明用の配線レールにハンガーをかけられるようにしたり。大きな木箱は、ABARTHというイタリアの自動車メーカーがパーツを運搬する際に使用しているものを譲ってもらって、フタにヒンジを取り付けて衣類ケースとして使っています。

――最後に、一番製作が大変だったであろうお風呂について。扉を上にスライドさせる浴室なんて、初めて見ました。

ガレージで使用する部品を使うことでこの形になりました。当初はガラス戸をスライドさせるつもりだったものの、見積もりをとってみたら想像以上に高かった。確実に予算オーバーなのでどうしようとなった時に、一軒家に住むならガレージを作ろうと思っていたんですよね。それで集めていた資料を漁っていたらこのパーツを使っているガレージを発見して、「コレだ!」と。本来そこで使用するはずのない部品を使うことで生まれる意外性が、リノベーションの一番の楽しさだと思っています。

――このお住まいを作り始めた頃は、住宅にまつわるお仕事はされていなかったじゃないですか?実際にリノベーションに関わるお仕事をされるようになって、「もっとこうすればよかった」と思うことはありますか?

改めて振り返ってみても、最初に自分が思い描いていたイメージに近い雰囲気には仕上がっているので、満足はしています。とはいえ結局仕上げをしていない状態なので、ちょっとずついじっていきたいですね。一度は壊しましたが、また壁を作ってみたり、剥き出しの状態になっている壁もどう仕上げようか考え中。まだしばらくはこのラフな感じを楽しむつもりですが、好みの素材が見つかったらガラっと変えてしまうかもしれませんね。

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