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2017-10-11

老舗眼鏡店2Fにひっそりと。
知る人ぞ知る会員制コミュニティスペースとは?

SAHRE on

西島眼鏡店(東京都港区虎ノ門)
店主:西島 達志(ニシジマ タツシ)
http://www.opt-nishijima.com/

もうすぐ創業100年を迎える老舗眼鏡店が、引越を決意した。お客さんとのコミュニケーションを中心に考えた空間作り、店作り、人との関わり合い方。ただ商いをする為だけに留まらない、ニシジマスタイルのこだわりを聞いてみた。

街に溶け込むような調和した店構え

オフィスビルの谷間に、その店はあった。
道路に3.6mほど面した、2階建ての小さな店舗。営業していないときの面構えは、シャッターや金属柵ではなく、温かみのある木の扉だ。飾られた手作りのメッセージボードやカラフルなPOPが、楽しげに店のことを紹介している。
店主のプロフィールや趣味、近況報告の「カンバンブログ」や、利用客からのコメント、新聞紹介記事などが並ぶ。何の店かと不思議に思ったのか、観光客らしき外国人女性が足を止めて眺めていた。
この場所に移転してきたのは約半年前。そのはるか以前から在ったかのように、「西島眼鏡店」は街にすっと溶け込みながら、たたずんでいる。


閉店時間もなぜか温かみを感じてしまう

人を迎える場でありたい

午前9時59分。店主の西島達志さんが扉を開くと、ショーウインドーが姿を見せた。
かわいらしい装飾やモノクロの写真が、眼鏡店らしからぬ個性を主張しているディスプレイ。入口の取っ手がメガネの形状をしており、これから入る店について再確認させてくれた。
「ウチに入ってくるお客さんに、早く気持ちを開いてもらうというか、ニュートラルになっていただけるように、店内の設えなどを考えています。だから、直接会わない時点でも、自分の生い立ちや考えを語ってみたり、コミュニティの様子を見せたりしているんです。」
西島さんが、人を迎える場として心掛けていることを説明してくれた。陳列されたメガネのひとつひとつに、「さわやかな笑顔に似合う」「デザインとフィット感がウケています。」といった、手書きのタグが添えられている。西島さんと常連客が並んだ写真や、様々なメッセージが所狭しと飾られて、飽きることがない。
落ち着きを感じさせる、木造の空間。天井側から左右に向かって突き出した屋根型の梁(はり)が印象的だ。店舗の間口を広く取って開放的にし、内側から強度を高めるために「ほお杖工法」と呼ばれる構造を選択したそうだ。


メガネをモチーフにした遊び心のある扉が個性的


所狭しと置かれた商品やメッセージが語りかけてくるようだ

引越を共に楽しめるほどのお客さんとのつながり

西島眼鏡店は1919(大正8)年に創業し、西島さんは3代目。愛宕・虎ノ門地域で100年近く営業を続けてきた。店内のアプローチには、初代の故・邦衛さんや家族の写真、当時のカタログもレイアウトされている。古い眼鏡や検眼レンズなども展示され、あたかも歴史博物館のようでもある。
虎ノ門ヒルズの場所にあった最初の店は、関東大震災で被災した。近くに移転した店も空襲に遭うなどして、現在の店が6軒目。地域の再開発に伴い、ビルのテナントという道を選ばず、路面店として2016年2月に再スタートした。
引っ越しに際しては、訪れた人がホッと安心できるように、雰囲気をできる限り残した。棚には、以前の店の柱の一部が用いられている。移転をイベントとして楽しもうと、顧客などと共に約100人にもおよぶ“引っ越し部”を立ち上げ、建築現場の見学会を開いたり、当日はリヤカーで運搬したりするなど、みんなで一体となって共有した。
そんな人々とのつながりや共感を、西島さんは大切だと考える。「この店って楽しそうだねとか、大切な存在だとか、いろんな共感の種類があります。いわゆる顧客を囲い込むのではなく、目に見えない旗にみんなが集まってくるような。それは、お互いに心地の良いものです。」
気付いたのは、10年ほど前。コミュニケーションが足りないと感じて、妻の理佳さん手づくりの新聞を発行したのを手始めに、お店を少しずつ変えていった。ディスプレイなども絵心のある理佳さんに協力してもらった。「お客さんとの間に、橋がそこでつながった気がした。」と振り返る。


この笑顔も人を惹きつける要因のひとつかもしれない

「共感」をベースにしたコミュニティスペース

様々な小物で彩られた階段を上ると、“会員制”のコミュニティスペースである2階に。光が大きく差し込む窓辺には、机と椅子が設けられ、ゆったりとリラックスできる場所となっている。贈呈された小説や絵本などが並ぶ「ニシジマ文庫」は、本を借りて持ち帰ることもできる。
前の店でも、座ってくつろぐサロンのような一角はあった。それを形にすることで、理想とする形を具現化させた。店内の空間作りへのこだわりを、西島さんは語る。
「店や人というものは、必ず使命を持っていると思っています。ウチの場合は3つあって、1つは人が緩やかに交流して、心がなごんで豊かになる場所であること。」と西島さん。生活者がつながりを求めるようになった現代では、それは商いと無縁ではないと考えている。
「2つ目は、メガネの専門家として信じることを伝えて、目を生涯使い切っていただくこと。最後に、店という形を通じて、地域らしさを次代に伝えることです。」
街を離れずに店を続けるのも、地域の生活文化を大切にしたいという理由が大きい。愛宕・虎ノ門で生まれ育った西島さんの眼には、東京タワーを背景に活気あふれる商店や、友達と遊んだ路地裏などの記憶が目に焼き付いている。
それは、愛宕が舞台とされる映画『三丁目の夕日』シリーズの風景そのものだ。再開発の波で地縁が消えつつあるなか、“共感”をベースに地域を超えたコミュニティ空間を、西島さんは目指している。


コミュニティスペースとしてしつらえた2Fの空間


丁寧に調整したメガネはフィットしながら疲れないと評判


小さな敷地を活かせる「ほおづえ工法」の特徴ある梁

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