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2017-09-26

夏は舞妓さんとビアガーデンも!
伝統と文化の残る街、京都の花街「上七軒」

SAHRE on

風光明媚な街並みを魅せる街、京都。伝統を守り、格式を重んじるその景色には、日本人のみならず多くの外国人たちが訪れる。京都の中でも、漆黒に彩られ、大人な風情を感じさせてくれるのが、「花街」と呼ばれるエリアだ。

花街とは、芸姑や舞妓たちが所属する置屋をはじめ、彼女たちとの一時の時間を楽しむための待合茶屋などが軒を連ね、商売人をはじめとした大人たちが、夜な夜な集まる社交場だ。

現在、京都には祇園甲部・祇園東・先斗町・上七軒・宮川町の5つの花街が「京都五花街」と呼ばれ、存在する。それぞれの花街には、各々芸姑・舞妓が属し、街ごとにひとつの文化を形成している。

その中でも、北野天満宮のお膝元にある花街が上京区にある「上七軒」だ。

北野天満宮は、学問の神様として知られる菅原道真公を祀る“天満宮”の総社として知られる神社。

境内には、“神牛”と呼ばれる牛の像や彫刻が多く点在する。これは、道真公が大宰府で亡くなった後、遺骸を運ぶ際に車を引く牛が座り込んで動かなくなった故事に由来したものだ。

道真公は梅の花をこよなく愛したため、北野天満宮には多くの梅が植えられており、有数の梅の名所としても知られる。梅雨終わりから秋にかけて、境内では梅の木から採った実を干し、梅干しにする。伝統的な梅干しづくりの光景は、この時期ならではだ。

上七軒の名の由来は、室町時代に戦火により焼け落ちた北野天満宮を再建した際、資材が残ったため、そこに7軒の茶店を作ったことから、その名がついたと言われている。

その後、天下統一を果たした豊臣秀吉が、この地で北野大茶会を開いたのを機に、この街が花街として発展。さらに西陣織の発祥の地も近く、呉服問屋たちが頻繁に利用したため、旺盛を極めていった。

大茶会を開いた秀吉は、その際に献上された団子を大変気に入ったそう。そのことから、上七軒には今も団子屋や茶店が軒を連ねている。これも京都五花街の中で、上七軒ならではの光景とも言える。

北野天満宮を出て、上七軒のメイン通りを歩くと、一軒の喫茶店が目に入った。立ち寄った「喫茶・梅」の店内には、上七軒の芸姑・舞妓たちのうちわが飾られている。

このうちわは、花街の店に年に1度、6月の時期にご挨拶周りの際に配られるもの。上七軒に属する、芸姑・舞妓の全員の名前が記されている。これは京都の花街ならではの光景で、上七軒以外の京都の花街でも、同様のものを見ることができる。

メインの通りが漆黒の壁面なのに対し、脇道を覗き見るとやや色味が変わる。情緒のある佇まいは、ノスタルジーさを感じさせてくれる。

ちなみに、上七軒のお店の軒先には、特徴的な図柄の提灯が掲げられているのだが、この図柄は前述した秀吉が気に入った「団子」をモチーフにしたもの。黒・白・赤の3色が、街並みを一層と趣深いものにしている。

花街には芸姑・舞妓の属する「置屋」、彼女たちを呼ぶ「お茶屋」が在るのが特徴。ちなみに、お茶屋は基本的に場所を貸すだけで、料理は「料理屋」が仕出しで運ぶ。それぞれが分業となっているのだ。

余談だが、芸姑と舞妓の違いを簡単に説明すると、舞妓として芸を磨いて一人前となると芸姑になる。もうひとつ加えると、花街は別名・遊郭とも呼ばれるため、遊女と芸姑を一緒のものと勘違いする人もいるが、芸を売るのが芸姑、身を売るのが遊女なのだ。

芸姑や舞妓が、芸の練習をする歌舞練場。上七軒の歌舞練場は、夏の期間はビアガーデンとして営業しており、本物の芸妓・舞妓がおもてなしをしてくれる。芸者遊びは敷居が高いという人も、ここならば気軽に楽しむことができるだろう。

芸姑や舞妓に思いを馳せながら、通りを歩いていると、一軒の蕎麦屋が目にとまった。

大きなカウンターのみの店内は、伝統とモダンのハイブリッドな雰囲気を魅せる。

年の瀬に発表される「今年の漢字」で知られる清水寺の住職が、特別に書いてくれたという表札。お店は、昼間のみの営業で、夜はワインバーとなる。

日本でも数少ない、韃靼の実を使った蕎麦。通常の蕎麦と比較して、数十倍のルチン含むため、血圧関係などに良いとされている。

店の大将は脱サラ後、蕎麦屋で修行をした後に、韃靼に惚れ込み、韃靼そばの専門店としてオープンしたそうだ。前述の「粋なそば」は、健康に「生きる」という意味も込められているとのこと。

こちらの建物、飲食店がメインではなく、実はデザイナーズホテル。蕎麦屋のカウンターの前には、ホテルである「上七軒 億」の受付がある。特別に客室を覗かせていただいた。

かつてはお茶屋だった建物をリノベーションしたホテル「上七軒 億」。この街には、ここをはじめリノベーションをしたお店が多く見られる。伝統を守りながらも、新しいものを取り入れていく様は、花街ながらの文化と言えるのかもしれない。

廊下には、リノベーションする前の建物との比較写真も飾られていた。どのように生まれ変わったのかを知ることができるのも、また楽しいものだ。

客室に入ると日本ならではの、畳の和室が出迎えてくれる。赤と黒がビビッドな独特の色使いは、花街のお茶屋の雰囲気そのものだ。まるで、時代劇の中に飛び込んだような感覚さえ覚える。

一方で寝室は、洋風なベッドが設置され、居心地の良さを感じさせる。和と洋のハイブリッドは、この街だからこそ色味が増す。

室内には、ヒノキの香りが漂う内風呂がある。外には、五右衛門風呂の露天も用意されており、旅の疲れを一気に癒やしてくれる。

街並みを愛し、伝統と文化を守りながら、常に新しいアプローチを魅せてくれる京都・上七軒。忘れかけた何かを取り戻させてくれる、静かな時間がそこには流れていた。

(取材・文 黒宮丈治)

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