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2017-10-24

シンプルに生きる。
ライフスタイルは、家だけでは完成しない。

SAHRE on


品田英雄(しなだ・ひでお)
1957年生まれ。80年学習院大学法学部卒業後、ラジオ関東(現ラジオ日本)へ入社。87年日経マグロウヒル(現日経BP社)入社後、エンタテインメント業界向けの週刊誌「日経エンタテインメント」記者、開発室などを経て、97年にエンタテインメント総合誌「日経エンタテインメント!」の創刊編集長に就任。03年同誌発行人に就任、07年同誌編集委員に就任。現在は日経BP総合研究所上席研究員。

家も人も、“トレンド”という潮流に合わせ、時代とともに変化してきた。その「流行」の最前線で、常に目を光らせる人物のひとり、品田英雄さんのご自宅にお伺いし、住まいやライフスタイルのこだわりについて話を伺った。

――白を貴重としたモダンな雰囲気が素敵なお住いですが、こちらはいつ頃建てられたものなのでしょうか?

この家を建てたのが1996年なので、21年前ですね。

――開放的なリビングといい、当時としてはかなり珍しかったのでは?

そうだと思います。まだ日本では、地中海風とか、サンタモニカ風みたいなものが少なかった時代ですね。

――こちらの家は、どういったコンセプトで建てられた感じだったのでしょうか?

「シンプルでナチュラル、それでいてモダンな感じ」という言葉でお願いしました。基本的なコンセプトは妻が考え、設計士さんとの打ち合わせをしてくれた感じです。背伸びしながらも日常を大切にするというのを、彼女がとても考えてくれて。材料探しも大変な時代に、なんとか頑張って完成までこぎつけたという感じですね。

――参考にされたものはあったのでしょうか?

妻が外国人相手の日本語教師で、大使館や世界的企業のエグゼクティブを生徒に持っていたので、海外の様式を取り入れたモダンな建物によく出入りしていたのです。それを参考に、設計士さんにアイデアを伝えて形にした感じですね。

――白を基調に、とても穏やかでいい雰囲気ですよね。

ありがとうございます。窓から入ってくる自然光のおかげで、朝から夜にかけて、一日の変化が感じられるのが特徴ですかね。照明も直接照らすのではなく、壁に反射させる関節タイプにしています。中でも特にこだわった部分が、マーヴィンの木製サッシです。溝に段々がついていて、そのおかげで白色の中に陰による色合いが生まれ、光が立体的になるんですよ。

――これが21年前の日本で、建てられたのが驚きです。

当時としては、この木製サッシはかなり珍しかったです。ただ後から分かったことですが、この頃のマーヴィンの木製サッシは、木が腐ってしまうという問題があるんです。(笑)
そのほかにも、床暖が無いなど、全体的に見ると使いにくいところもあります。ただ、この家に長く住んでみて思ったのは、苦労しながらも楽しむという体験をさせてもらっているなと。

――流行に流されず、飽きずにずっと好きでいられる住まいだなと思うのですが、一方でトレンドの最前線にいる品田さん自身とは、相反するところがありますよね?

そう思うかもしれませんが、実はそうでもないんです。この家を建てた30代後半の頃は、自分も色々と経験を積んで、何が楽しくて、何にときめいて、そして何を嫌だと思うかが分かってきた頃でした。そこで、自分の立ち位置を決めた方が、安心して流行と接することができるなと思ったんです。

――立ち位置というのは?

そもそも、“相性がいい”と、“楽しめる”というのは違うなと思うんです。例えば、非日常だからこそ楽しめるというものがありますよね。「自分の根っこはこうだな」というのがあることで、日常と、非日常を分けられる。それが大人ということなんじゃないかと、経験を積んできて分かってきたんです。だから住まいという部分では、流行を求めるのではなく、自分が落ち着ける「根っこ」に合わせたものにした方がいい。つまり、自分の立ち位置が何であるのかに沿った方がよいということです。

――そうなってくると、品田さんにとって、この家は“終の棲家”になっていく感じでしょうか?

そこまでは、考えてなかったですね。なぜなら、家自体がライフスタイルの全てではないと思っているからです。那須に義母が天竜杉をつかったログハウスを建てたのですが、そこは自然の中で暮らすちょっと不自由な家なんです。自分の家は“光で四季を感じられる”なんて言っていますが、そのログハウスは本物の四季が感じられる。それでわかったのが、自由なことも時に楽しいんだなということ。建物だけではライフスタイルは完成するわけじゃないですね。

そして人間は、“慣れる”“飽きる”ものだと思っています。だからこそ、そこをどう超えていくかが大切かなと。出来上がった時は100%で、あとは下がっていくみたいなものいっぱいありますよね?ミッションやビジョンがしっかりしていればしているほど、時代によって変わる。だから、インテリアにちょっとソリッドなものを入れる時もあったり、緑を多く取り入れたり、椅子やソファーのカバー、小物などを使って、その時々の変化を楽しんでいますね。

――しかし、全体としてはミニマルスタイルというか、非常にシンプルにされていますよね。

自分たちが気持ちよく過ごすことを基本に考えていて、気持ちよさはどこから来るかというと、モノは少なくして暮らしたほうが生きやすいというのに落ち着いたんです。だから、モノにこだわらないようにして暮らしています。

――そのほかに、ライフスタイルという点で、大切にしていることはありますか?

長年住んでわかったことがあって、合成樹脂って色が変わるんですよね。焼けるというか変色する。それだけじゃなくて、どんなものでも紫外線によって、色が変わっていくんです。ナチュラルなものは、変化が自然ですが、人工的なものって少し嫌な感じに変化する。出来た時に同じように揃えても、変化のスピードが変わってくるから、味わいの出るものも、望まないものもある。そこは少し悲しいから、整えていく必要もある。そんな風に、試行錯誤しながら暮らしていくことが大事だなと。

――自分と同じように、家も歳を重ねていくといった感じでしょうか。

そんなにかっこいいものではありませんよ。(笑)
モノは人間と同じで成長していけば、老化していくし、変化するし、劣化する。手間をかけなければ、手入れをしなければ、維持はできない。それが大事なことだと感じさせてくれる家だなと思っています。

(取材・文 黒宮丈治)

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