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2018-03-20

中野・新井薬師のジャズカフェ「ロンパーチッチ」。こだわりのスピーカーとコーヒーで静かなひと時を。

SAHRE on

rompercicci(ロンパーチッチ)
オーナー
齊藤外志雄(サイトウ トシオ)さん
齊藤晶子(サイトウ アキコ)さん

サブカルチャーの発信地として名高い中野ブロードウェイから名刹新井薬師へ少し足を伸ばした路地に、かわいらしくてセンスの光る小さなカフェを思わせるお店がある。ここは、ジャズ喫茶「ロンパーチッチ」。不思議な響きの名前を持つこのお店のオーナー齊藤夫妻に、ふたりの夢の始まりとロンパーチッチという空間への思いを伺った。

ふんわりとした「いつかは・・・」が現実味をもった2011年。

結婚した頃から、いつかジャズ喫茶をやりたいと思っていた齊藤夫妻。ただ、ジャズ喫茶をやって生活はなりたつのかとの不安もあり、その思いはどこか現実逃避の言い訳のようなものだったという。
「ジャズ喫茶」という共通の夢があることでイヤなことがあった時にも「大丈夫だ」と思える心の支えのような存在だったそう。
よく訪れる吉祥寺で、お店に最適なイメージの物件があったら不動産屋に行くなど行動をしていたものの、比較的ふんわりとした感じの、もっと先に具体化するようなことだったようだ。

それが、急に現実味を帯びる。きっかけは2011年3月の東日本大震災。IT企業でSEをしていた外志雄さんは、震災の恐怖の中ではっきりとお店をやろうと決意した。

外志雄:「揺れる社内で机の下に潜っている時、こんなやりたくもない仕事をして死ぬのは絶対にイヤだ!と思ったんです」

そして、その思いは偶然の出会いを引き起こす。

なにげない散歩での出会い。新井薬師にて。

外志雄:ふと普段はあまり歩かない家の近所の通りを散歩していたら、ちょうどいい感じの物件を見つけたんです。
何故か作りかけで放置されている物件で、お店ができそうだなと思い不動産屋さんにお話を聞きにいきました。軽い気持ちでふらりと。それが・・・
晶子:ちょっと問い合わせをするつもりだったんです。ホントに。それがいつの間にか気がついたら契約まで進んでしまっていました(笑)。

当時ふたりは会社勤め。外志雄さんはすぐに会社を辞することができず、最初の3ヶ月は晶子さんひとりで店を開いた。
2011年の3月に震災を経験し、その年の12月にオープン。ずっと思ってきた「いつかのお店」ロンパーチッチが、ここに誕生した。

不思議な響き、「ロンパーチッチ」

ロンパーチッチという不思議な響きの店名について掘り下げてみたい。

晶子さん:これ・・・私がぽろっと言った単語なんです。意味もなく。まだ、開店の具体的な考えまでいたっていないころ、夢物語みたいによくふたりで店名を考えていたんですね。「コルトレーンとか、いかにもジャズな名前じゃなくて、なんかこう、響きがかわいい感じの名前がいいよね、例えば・・・ロンパーチッチとか!?」
外志雄:もう、ぼくは「それだーっ!」って感じでした。
晶子:いつしかその名前が旗印のような意味合いを持ち、「ロンパーチッチいつやるの??」とか友人から言われたり、「ロンパーチッチの内装はこんなのいいかもね」とふたりで言い合ったりするようにキーワードとして機能し始めたんです。

晶子さんの何気ない言葉遊びから、覚えやすくて、唯一無二で響きもかわいらしいお店の名前は決定していた。

シンプルで明るい空間

白を基調として、すっきりとした明るい空間のロンパーチッチは、いわゆる往年の「ジャズ喫茶」イメージとはちょっと違う。

晶子:昔ながらのジャズ喫茶のような、薄暗い感じのはやりたくないと強く思っていました。ふたりとも空間の色は明るい色にしようと決めていました。
ジャズ喫茶だから濃い茶色や黒。そういうアドバイスをいただいたりもしたのですが、絶対にうすい色にしたいとかたくなに思っていました。
外志雄:ガラス張りで、外からも中の様子がすっきり見えているようにしたいとも思っていました。あとはできるだけシンプルに。ミュージシャンの写真やポスターアは貼りたくなったんです。ふたりともシンプルな空間が好きですね。

だからなのだろうか、ロンパーチッチには「ジャズ喫茶」という少々緊張するような、ジャズ好きしか受け入れないようなそういった堅さはなく、まったく身構えずに入店できて、静かな時を過ごすことができる。
ふたりのシンプルで明るい空間づくりへの配慮が感じられる。

音楽と会話のちょうどいい関係

音楽を楽しんでほしいから、会話も小さくお願いしているロンパーチッチ。
そこには、こんな思いもあった。

晶子:昔アルバイトをしていたジャズ喫茶で感じたことなのですが、おとなしい人も、元気な人も、みんなお店では同じようなテンションでひとときを過ごす感じがいいなと思っていました。会話を楽しみたい人と静かに過ごしたい人が共存するのは難しい時もあるので、心地よく流れる音楽の間に、静かな会話が控えめにある空間にしたいと思っています。

2000枚のレコードと週5枚ほどの新入荷

心地良く流れる音楽。レコードやスピーカーのことを聞いてみたい。

晶子:レコードは常に2000枚のストックがあるようにしています。シンプルな空間にしたいので、あまりレコードがあふれるようにせず、限られたスペースに収納するようにしています。ソニーロリンズやマイルスといった基本は必ず置いていて、かける曲はピアノトリオを重ねないとか、編成を変えるとか唐突に曲調を変えないとか、そういったことを基本的には気にかけています。
外志雄:何にせよ、週一で来てくれる人に対しては、新しい曲を聴いてもらいたいと思っています。週に1回、4〜5枚は新しいレコードを仕入れるようにして、ピアノソロ、サックスが入ったもの、歌が入っているもの、ビッグバンドにしようかな、などと考えながらレコードをかけています。時々はうっかり、ピアノソロが連続になることもありますけど(笑)。

レコードを選ぶ基準は、今お店にないもの。CDはなくアナログレコードだけをかけている。スピーカーはお店の入り口に向いて左右にふたつ配置。ドアを開けると、ちょうどいい音量の小気味良いジャズが体を包む。
音の核となるアンプは、ケースがなく、配線がむき出しの他にはないようなメカニカルな存在感を放つ。

晶子:最初は真空管のアンプを使っていたのですがヴィンテージのものでしょっちゅう機嫌を損ねることがあり、困っている時にオーディオマニアのお客さんが、アンプを貸してくれた。フィッシャーというメーカーの良い感じのアンプだったのですが、これもある朝、バン!ていう音がして、まったく動かなくなってしまったんです。
そのあと、近所のまたまた新しいおじさんが、手づくりのアンプを永久に貸し出ししてくれて(笑)。アンプはお客さんに助けられていますね。
外志雄:そのアンプにしてからもう2年程ですが、このお店に合っていると感じています。基板丸出しで、なんと言いますかオーディオマニアの方からの「オレの方がいいの持っているんだぞ」という、自慢の比較対象にもならない。ちょっとアンタッチャブルで不思議なポジションに位置していて(笑)。

いつまでも、この場所で。

開店は、夢のゴールではなく「はじまり」だと話す齊藤夫妻。これから先の未来にふたりが思い描くこととは何だろうか。

外志雄&晶子:細く長く続けていけたらと思っています。お店を大きくしたり、多店舗経営をしたいということはなく、いつまでもここでやっていきたいです。
もしかすると、私たちが出会っていなくてお互いがバラバラのままだったら、ふたりともお店はやっていないかも。そう思います。このお店を開けたことでお互いの夢はスタートしました。そして、このままロンパーチッチを続けていくことが永遠のゴールです。

ジャズと珈琲と、ふたりのやわらかい雰囲気がつくりだすロンパーチッチという空間。静かに音楽と交わる時間を味わいながら自分と向き合える、こんなお店を知ったことに、そっと感謝をしたい。

東京都中野区新井1-30-6 第一三富ビル102
11:00-23:00(ランチ -14:00) 月曜休
中野・新井薬師の各駅から徒歩10分前後

(取材・文 丸 信虎)

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