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2017-11-16

仕事と子育て。
理想が詰まった一家の住まい。

SAHRE on

インテリアスタイリスト
守 真史(モリ マサフミ)さん

インテリアカンパニー「カッシーナ・イクスシー」のVMDとしてキャリアを積み、現在はフリーランスのインテリアスタイリストとして活躍する守さん。空間の総合的なプロデュースを生業にするプロならではの、実験的なアイデアとプロのテクニックが見事に融合された夢の住まいを見せていただきました。

――この家を選んだ理由を教えて下さい。

そもそもリノベーション前提で考えていたので、中古の広い部屋を探していました。その方が安価に理想の家を作られるというのが本音です。たまたま最初に内見に来た家がここで、かなり古かったのですが富士山まで見通せる広いルーフバルコニーを見て、すぐに購入を決めました。マンションなのに庭のようなスペースでもあり、娘の遊び場にもなりますから。探し始めてすぐに気に入った物件に出会えたのはラッキーでしたね。

――なるほど。物件を決めた後の内装工事の流れなんかも聞かせでいただければ。

僕たちの場合は、妻も建築設計事務所勤務なので、デザインから基本設計までを自分たちでまとめ、実施設計から施工をネンゴさんという会社にお願いしました。

――リノベーションを進める際、予想外のことなどはありましたか?

ありますね。そこがリノベーションの怖さであり面白さでもあります。まずスケルトンにするため床、壁、天井を撤去していくのですが、建物が古いせいもあって詳細な図面がなく、壊してみないとわからないことが多かったんです。例えばもともと風呂場だったスペースの間仕切り壁が実際は構造体並みの厚い壁で壊すことが難しく、トイレにコンバートすることになりました。そういったことは、どうしても工事を始めてからわかってくることなんです。

――想定外はある意味でリノベーションの醍醐味かもしれませんね。

そうですね。想定外の事態に出会ったときに、悩みながらデザインし直した結果できあがったものが、元のプランより面白いということは往々にしてあります。全てが自分の恣意的なもので埋まる息苦しさもありますしね。一見不利に見える条件も含めて、その物件の個性や環境だと捉えてそれを活かす方法を考える楽しみがまさしくリノベーションの醍醐味なのではないでしょうか。

――各部屋の説明をしていただけますか。

まず、玄関を入ってすぐに書斎的なスペースを設けました。ここはリビングダイニング、玄関脇の部屋、トイレにつながる廊下を兼ねた部屋です。単なる動線空間でしかない廊下を少し広げて部屋にしてしまうことで活用度がぐっと上がるんです。書棚を設置し、PCを置き、いまは自分のメインの仕事場になっています。
リビングダイニングとの間は壁ではなく大きなスライドドアで仕切っていて、普段は開け放し、仕事のときは閉じるなど、必要に応じて空間のつなぎ方を変えることができます。

――廊下スペースを仕事場にするという発想は面白いですね。

限られた面積なのでスペースの有効活用には結構気を使っています(笑)。ちなみに玄関脇のスライドドアを開けるとこっちも仕事場になっています。こちらは実際に手を動かす工房的な役割を担っていますね。革用のミシンは、妻が独立祝いにプレゼントしてくれました。

――リビングダイニングは廊下も開放すると本当に広々とした空間になりますね。

大前提として大きなワンルームっぽくしたかったんですよ。ある意味でこの家の最大の贅沢である、広いバルコニーに面したリビングダイニングを中心に、玄関側も奥のベッドルーム、クローゼットも建築的な壁では仕切られていません。「建築的な要素を最小限にして、建具を含む家具的なものでインテリアを組み立てる」というのがこの家のデザイン手法です。壁がなくても、パーティションやラグで空間をやわらかく仕切ることができています。

――ワンルーム的でありながらほどよく空間を仕切っているんですね。

そうですね。そうすることで生活の営みのグラデーションが空間のグラデーションに重なって、とても身体的な居心地の良さを感じることができます。

――ダイニングテーブル、かっこいいですね。

ありがとうございます。個人的にはこの家の家具のなかでいちばん気に入っています。ル・コルビュジエのデザインなのですが、120センチに160センチという縦横比が特徴なんです。面積の割にすごく広く感じられるのもポイントですね。詰めれば8人座れます。脚部が天板の内側についているので、角に座ってもテーブルの脚部に足が当たりません。照明はネモのシャンデリア。シンプルさと華やかさを両方持っているところが好きです。椅子はオフィスでも使われることの多いアリアスというメーカーのもので、座面がメッシュ素材で熱がこもらず長時間座っていても快適です。

――キッチンまわりはいろいろな素材が使われていますね。

そうなんです。サンワカンパニーのキッチン本体をベースに、ゼブラウッド、オーク、石、鉄サビ塗装などを組み合わせてキッチンスペースを構成しました。
仕事ではいろいろな人の意見が重なるとどうしても無難なデザインにおさまりがちなので、自分の家では実験してみたかったんです。いろんな素材を組み合わせる冒険を、まずは自分の家でやってみようと。結果的には異素材でも色のトーンが近いこともあって驚くほどすんなりとまとまりました。

――リビングの奥のスペースは手前と違って色彩豊かですね。

このスペースは最近手を入れたんですが、当初のシックな雰囲気にも飽きてきて、色と柄で遊びました。壁を塗り直し、ソファのオーバーカバーとクッションカバーを新しく作って。
壁に塗った紫色は日本では敬遠されがちですが、中間色で実は意外と合わせやすい色です。ターコイズグリーンやレモンイエロー、ボタニカル柄や豹柄まで入れて賑やかですが、破綻はしてないでしょ?(笑)
スタルクデザインの大きなミラーと壁掛け時計、アッパーの照明器具で、紫の壁を彩っています。

この冬、レザーアイテムのブランドを立ち上げ予定でもある守さんがデザイン・製作したバッグ。色と素材のバランスへのこだわりがここにも見てとれる。それぞれの箱に入っている靴のイラストが描かれた玄関の靴棚。細かなところにまで守さんのセンスが散りばめられている。

――ベッドルームの壁も珍しいですね。

ここは、格子柄のルーバーを採用しています。もともとは見た目のかっこよさから入ったんですが、光と風を通すので機能的にも合理的です。リビングのエアコンの風が直風ではなく柔らかく入ってくるのもメリットですね。

――全体を通して思ったのは、仕切りがありながらも全ての部屋が繋がっていると感じました。

そうですね。壁に囲まれた小さな部屋に閉じこもっていたら、家そのものがどれだけ広くても、その瞬間は小さな部屋の大きさしか知覚できないと思うんですよ。どの部屋にいても家全体の広がりを感じることができる、バルコニーの開放感を感じることができる、家族の気配を感じることができる。自分たちが家というものに期待していることを存分に詰め込むことができたと思っています。

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