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2017-05-05

理想のゴールを共有するために
インテリアコーディネーターという仕事(3)

SAHRE on



住まいをもっと快適な空間にするお手伝いをする「インテリアコーディネーター」。その存在を知ってはいても、依頼するとなると「敷居が高そう」と遠慮してしまいそうですが、実際はどうなのでしょうか? 私たちの暮らしにとって、遠い存在のようで意外に身近である、インテリアコーディネートの魅力をHowScope編集部が探っていきます。

前回の打ち合わせから、しばらく経ったある日。「部屋の模様替えがほぼ終わりました」と、Kさんからのご連絡。そこで、「suzukuri(すずくり)」の鈴木さんと一緒に、ご自宅へと伺いました。鈴木さんのインテリアコーディネートで、Kさんの寝室はどのように変わったのでしょうか。

「ベッドが届いたばかりなんです。新しい部屋では、まだ寝ていないのよ」と、笑顔で迎えてくださったKさん。どことなく、先日お会いした時よりもイキイキとして、若返られたような雰囲気です。

「拝見してよろしいですか?」と、鈴木さんも仕上がりが気になる様子。
さっそく、1階の寝室に案内してもらいました。

ぱっと明るい部屋の中は、入る前から明るく開かれているような印象。前回訪れた時には、すぐに身長ほどの高さの家具が目に入ってきました。新しい家具は腰ぐらいの高さで、入口の向かい側に配置したことで、開放感が生まれています。

Kさん:「光をすごく気持ち良く感じました。この部屋こんなに明るかったんだなって」
鈴木さん:「天井を木から白いクロスに替えられたから、部屋の明るさも違いますね」
Kさん:「我が家は木の柱が見える造りだから、壁紙が洋風の模様柄でいいのか、最初は迷ったんだけど。全部気に入っていますよ」
鈴木さん:「ありがとうございます」
Kさん:「うれしくってさすっちゃうのよ、この壁紙.。ビニールクロスと質感が全然違う!」
鈴木さん:「柱の色とどこまで合うのか、実際に見るまで気になっていました。イメージしていた通りに、ぴったり合って良かったです。本当にホッとしました」

Kさん:「寝ていないって言ったけど、本当はベッドが来てすぐ、ゴロンと寝転んじゃったの。思わず顔がにやけちゃって(笑)」
鈴木さん:「部屋が変わって、ワクワクするのは楽しいですよね」
Kさん:「大げさだけど、『私はこれからなんだ』と思ったの。自分の年齢を忘れてしまうほど」
鈴木さん:「そう言っていただくと、とてもうれしいです」

before After

今回の大きなポイントは、引き出しの内寸までにこだわったオーダー家具。これまで使ってきた家具のサイズや、入れる衣類なども細かく調べ、Kさんのためだけに作られた家具です。

Kさんが「私の要望を全部聞いてもらって、こんな家具ができたんです」と、発注までの経緯を説明してくれました。服などを出し入れする感覚は今まで通りで、部屋を明るい空間にするためには、「ご希望されるサイズの既製品を探すのは大変。今回はオーダー家具ならではの、満足できるレイアウトが完成しました」と鈴木さん。

婚礼ダンスなどの産地として伝統的に高い技術を持つ、山形県の工場で製造。
鈴木さんは「安く手に入るものはたくさんあるのですが、量産重視ではなく、きちんとした『ものづくり』には、それだけの価値があります。想いや良さが伝わってきますよね」と語ります。

「そう聞くと、ますますうれしいですね」とKさん。オーダーで少し高い買い物になったのは確かですが、相応の満足感が得られたようです。

今回、鈴木さんがコーディネートを担当したのは、壁紙とシェード、オーダー家具です。ベッドは、Kさんご本人が購入。天井は、2階の工事に伴って、工務店を営むご主人が施工されました。Kさんにとって「寝るだけの場所だった」という部屋は、日中もくつろぎたい空間になったのかもしれません。

Kさん:「鈴木さんには相談しなかったんだけど・・・。ベッドのクッションは、ひとつ自分の好きなブルーのを買っちゃったの」
鈴木さん:「とてもイイと思いますよ」
Kさん:「色の相性とか関係なく、好きな色だから一目惚れして」
鈴木さん:「アクセントになっていて、キレイ。Kさんの“色”が入った感じがします」
Kさん:「今回すごく勉強になったのは、自分の好きなものだけを取り寄せても、それがケンカしてしまうと仕方ないということ。人の意見に耳を傾けることも大事だなと思いました。私はワガママが多くて(笑)」
鈴木さん:「いえいえ。きちんと主張があった方が、私としてはやりやすいです」

Kさん:「もしお客さんの好きなものがすごく変だったとしたら、どうしています?」
鈴木さん:「ご本人が納得されるのが第一だとは思います。でも、こちらも選択肢を用意して、段階的に提案していきますので。私の中でのベストは決まっているんですけど、意見が合わない場合もやっぱりあります。その答えを聞きながら、合うパターンを組み合わせて導いていきます」

寝室の模様替えについて、Kさんは「人生で今はたまたま平穏ですけど、将来はそのゆとりがないかもしれない。だから、今頼んでおいてよかったと思います」と振り返ります。

「明日の朝、起きてみると気持ちがいい。それだけのことかもしれませんが、大事なことです。あそこに絵を飾ろうかと思ったり、自分で部屋をいろんな風にアレンジしたくなってきましたね」

新しくなった寝室で、Kさんの見る“夢”が広がっていきます。

「Kさんは、大人の女性で、センスも良い方。そういう意味で、仕事のハードルは高かった。でも、要望をはっきり言ってくださり、判断しやすくなりました」と鈴木さん。お互いの意思疎通が、インテリアコーディネートをスムーズに進めるためのポイントだと言えそうです。

ところで、今回の仕事では、ベッドなどは依頼主のKさん自身のセレクトで、鈴木さんの担当外でした。インテリアコーディネーターは、部屋や住まい全体をコーディネートする場合もあれば、予算の都合などで部分的に依頼を受けることも多々あります。部分的な依頼の場合でも、部屋全体のコーディネートを損なわないように、鈴木さんは仕事にどのような線引きをしているのでしょうか?

「理想のゴールがどこなのかを見極めることですかね。だから私は、モデルルームなどのように『見せる』ことをメインとするのではなく、そこに暮らす方の日々の暮らしで困っていること、その先にどういうゴールを作るかに重点を置いて話を聞いています。お互いに理解しあってゴールを共有できれば、『この部分はご自身で』という分担がうまくできると思います」

鈴木さんの仕事は、例えるなら「住まいのコンシェルジュ」。依頼主から深い話を引き出して、自分の経験やノウハウに照らし合わせて答えを導く。決まった正解がない大変な仕事ですが、それだけに奥深いともいえます。

「インテリアコーディネートが終わった後も、お客様のライフスタイルは変わっていきます。その変化に合わせてお客様にずっと寄り添い、その時求めるゴールへ向かって並走していくような存在でありたいですね」

プロフィール

鈴木アラブギャリ君枝/インテリアコンサルタント・住空間収納プランナー。インテリア業界で約20年の経験を積み、ロイズアンティークスやワイス・ワイスでインテリアコーディネーターとして顧客と接してきた。インテリア・収納の双方の視点で快適な住まいづくりをサポートしようと、2012年に住空間収納プランナーとして「suzukuri」を起業。
suzukuri http://www.suzukuri-k.com/

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